

榎本『ウイニングイレブン』(以下、『ウイイレ』と表記)は、1995年の第1作目から現在まで、いろいろなプラットフォームで発表し、いわゆる "ボタン型コントローラ"でプレイするサッカーゲームとして進化を重ねてきました。しかし今回、我々が、いままでの『ウイイレ』とは別の、新しい遊びを作ることを目指して制作に取り組んだのが、Wiiで遊べるサッカーゲームです。今作は、従来のボタン型コントローラではなく、Wiiリモコンという新しいインターフェースで操作するのが最大の特徴となっています。
長曽我部Wiiというハードは、これまで『ウイイレ』シリーズを発表してきたハードとは、基本的な方向性が違います。一方『ウイイレ』は、ボタン型コントローラに合わせて進化してきたゲームなので、もしWiiでサッカーゲームを作るのであれば、『ウイイレ』を単にWiiに移植するのではなく、Wiiリモコンを使ったWiiでしかできない独自のゲームを作らなければ意味がない、と思ったんですね。それが今作を作るきっかけです。
榎本Wiiの発表前に、Wiiのコントローラが"ボタン型"でないという話を聞いて、「ほんとに遊べるものなのかな?」と、最初は疑問だったんです。その後、任天堂さんで実際に釣りのゲームなどデモを遊ばせてもらって、その疑問はすぐに解消しました。当時は、まだWiiの発表前だったのでリモコンのことを誰にも言えなかったんですけど、私が任天堂さんに行ってきたのを知ってるチームのスタッフからは、「何しに行ってきたの?」って聞かれましたね。こちらも誰かに伝えたいんだけど、「ちょっとまだ言えないんだけど、とにかくコントローラがすごいことになってるんだよ」ってことしか言えなくって(笑)。
長曽我部私も話を聞いた段階ではちょっと不安だったのですが、後から見せてもらって、榎本が話していた感触がわかりました。その後、『ウイイレ』をWiiで作ってみようということなったのですが、Wiiリモコンを触っているうちに、「
選手をポイントして引っ張る」というゲームシステムのアイデアは自然な流れで浮かんできました。
当初、制作チームのスタッフに話をした時は、「選手をポイントして引っ張って動かすなんて、本当にできるのか?」と、これまでにないコントロール方法に対して、とまどいが大きかったですね。そんな中、ポジティブに見てくれていた制作チームのプログラマーが、「とにかくやってみれば分かるんじゃないですか? まずはやってみましょう」と、試作を作ってくれたんです。これをテストしてみたところ、「選手をポインティングして操作する」というアイデアが、「いける!」という手応えに変わりました。この過程の中で、今作の基本システムを作っていくことへのスタッフの不安は徐々に消え、新しいものを生み出す期待に変わっていったように思います。またこの時期に、つまりゲーム作りの早い段階で、システムの可能性を見極められたことが、新しいサッカーゲームを生み出す原動力にもなったように思います。
長曽我部今作の大きな特徴は、Wiiリモコンでポイントすれば、
どこにでも思い通りの場所にパスを出せることです。パスを出したい選手を選べるし、ここに出したいとポインティングすれば、スペースにもパスを出すことができます。もちろん従来の『ウイイレ』も、パスを出したい選手に出せるし、スペースも狙えますが、一瞬の判断でより直感的に攻撃を展開できるようになっています。
そして、今作がこれまでの『ウイイレ』と決定的に違うのは、フリーラン※1です。従来の『ウイイレ』は、ボールを持っている選手だけを操作するシステムですが、今作は
ボールを持っていない味方選手も動かせるので、複数の選手を使ったコンビネーションプレイを思い通りに組み立てられます。これはまさに、本当のサッカーそのものを実現しようとする試みでした。
| ※1. | フリーラン:ボールを持っていない選手が走り、味方にスペースを作るための動き。 |
榎本パスやフリーランだけでなく、サッカーの基本である
ドリブルや
シュートなども、Wiiリモコンとヌンチャクで、より直感的に操作できます。これらのパスやドリブル、フリーランを組み合わせることで、
高度なコンビネーションも可能になり、サッカーゲームとして、ほぼ何でもできると言ってもいい内容になっていると思います。
長曽我部実際のサッカーの再現性ということで言えば、フリーランなどの新しい操作により、従来の『ウイイレ』よりも高い部分もあります。しかし一方で、ボールを持っている選手の動きの中には、一部、直接操作できなくなったものもあります。それは、今作と従来の『ウイイレ』とで、ゲームのコンセプトが違うためなんです。
従来の『ウイイレ』は、ボールを持っている選手をプレイヤーが操作して、周りの選手の動きをコンピュータが補うというシステムですが、今作の場合は、周りの選手も動かすことができます。つまり、プレイヤーがチーム全体を動かす役割が増えたぶん、ボールを持っている選手の操作の一部をコンピュータにまかせるようにしたんです。コンピュータとプレイヤーの役割分担が違うので、その割合も変わったと考えていただけると、わかりやすいかもしれません。例えば、シュートであれば、シュートの強さや方向は、従来の『ウイイレ』だとプレイヤーが操作するんですけど、今作の場合、「シュートを打て」という指示を出すと、選手は自分で姿勢を調整し、強さを加減して蹴るんです。
プレイヤーとコンピュータの役割分担を変えたことで、ボールへの意識とチーム全体への意識の両面をバランス良く保てるようになったのではないかと感じています。
長曽我部今回、リアルタイムで指示を出すサッカーゲームということで、操作に関しては他に参考にできるようなゲームがなかったため、試行錯誤の連続でした。
とくに頭を悩ませたのは、ヌンチャクのコントロールスティックを使った操作です。初めは、全く新しいゲーム性を目指していたので、コントロールスティックを使わない方向で突き詰めていたんです。しかし、周りの選手を動かしてる間に、ボールを持ってる選手がボールを奪われてしまう、ということが起こってしまいました。
今作は、周りを動かして攻撃を組み立てるというゲーム性が重要なので、攻撃中は周りを動かしている間もボールをキープしないといけません。「フリーラン」「コンビネーションプレイ」というコンセプトを生かす意味合いから、最終的に、
攻撃陣がボールを持っているときに限って、ある程度コントロールスティックでドリブルができる仕様にしました。ゲーム性の面から言えば、コントロールスティックには、ドリブル突破ではなく、ボールキープという新たな役割を与えたということになります。
長曽我部今作は、これまでの『ウイイレ』から操作方法を変えたことにより、全く新しいサッカーゲームになりました。1対1の局面だけではなく、オープンスペース※2やディフェンスライン※3の枚数など、チーム全体のバランスを見ながら試合をすることになります。むやみにドリブルで仕掛けたり、あるいはボールを奪いに突っ込んだり、ということは少なくなりますので、そういったゲーム性の違いから生まれるスピード感の差を感じるかもしれません。
でも実際は、クリスティアーノ・ロナウド※4などの選手をはじめ、ボールのスピードも、これまでの『ウイイレ』から何ら変えていませんし、スピーディかつ緊張感のある試合展開を楽しめると思います。ギャラリーとして、ゲームを眺めていても、テレビのサッカー中継を見ているようなテンポを感じていただけるのではないでしょうか。
| ※2. | オープンスペース:プレイヤーのいない空いたエリア。 |
| ※3. | ディフェンスライン:ディフェンダー(守備中心のプレイヤー)で構成する守備陣形。 |
| ※4. | クリスティアーノ・ロナウド: 現ポルトガル代表。 『ウイニングイレブンプレーメーカー2008』のイメージキャラクター。 |
榎本実際のサッカーでは、「フィールドの端でボールが来るのを待つ」というプレイスタイルのフォワード※5の選手もいるんです。これまでの『ウイイレ』では、そんなふうに「そこで待つ」という操作ができなかったんですよ。選手を引っ張って最前線に張らせておけば、その場所でボールが来るのを待たせておくことができる、こんなプレイができるのは、今作ならではですね。
| ※5. | フォワード:相手ゴールに一番近い位置にポジションをとり、主に攻撃を担当する選手。 |
長曽我部制作チームで「なだれ(笑)」と呼んでる戦術があるんですが、とにかく最後に1点取り返すために、
試合再開直後に選手全員を引っ張って攻め上げるというパワープレイもできたりします。
今までの『ウイイレ』は、ボタン型コントローラを使うため、かなりアクション性が強く、うまくなるには反射神経というか、ゲームのテクニックも求められます。だから、サッカーは好きなんだけれど、『ウイイレ』はあまりうまくできないという方もいらっしゃると思うんです。今回、新しい操作のサッカーゲームを発売することで、サッカーファンの皆さんの間にあったゲームのテクニックの壁が、一度リセットされるんじゃないかと思います。戦術や作戦がプレイヤーの意図としてリアルタイムで活かされるのは、おそらく初めてのことなので、試合展開のイメージを持っているプレイヤー同士であれば、ゲームの上級者と初心者の差は、かなり縮まるんじゃないでしょうか。
榎本これまでの『ウイイレ』の場合、サッカーをよく知っている人とアクションゲームがうまい人が試合をすると、おそらくゲームのうまい人の方が強いんです。でも理想を言うと、たとえゲームであっても「サッカーらしくプレイできる人の方が強い」というのが一番なんですね。たぶん今作は、ゲームがうまい人たちの独壇場にはならないと思うんです。ちゃんと操作を覚えたサッカー知識のある人と、ゲームのうまい人が戦うと、どういうふうになるのかというのは本当に楽しみです。
長曽我部今作では、これまでの『ウイイレ』に収録されてきた「マスターリーグ」に代わり、「チャンピオンズロード」という新しいモードを用意しました。これは、自分のチームを作って色々な大会に参加するモードで、勝ち抜くことで選手やスキルを獲得してチームを強化し、全大会の制覇を目指します。
Wi-Fiでのオンライン対戦に関しては、テストプレイをしながら最適化する作業をギリギリまで行いました。回線の品質によって通信モードを3段階設けることで、通信環境に応じてできるだけ快適にプレイができるように調整しています。
また、
日本代表チームが新しいユニフォームで登場することにも注目してほしいですね。
榎本今回、Wii版の『ウイイレ』を作るにあたっては、全く新しいものを作らなければならないと考えていました。だから、ボタン型コントローラの遊びの部分を一回壊して考えないといけないと思ったんですね。それで、あえて、これまで『ウイイレ』シリーズを作り上げてきた高塚※6のチームではなく、長曽我部のチームを起用したわけです。
結果的には、狙い通り従来の『ウイイレ』とは違った、もうひとつの新しいサッカーゲームを作ることができたんじゃないかと思います。高塚もとても意識していて、それを感じたときは、手応えというか、今作の完成度を確信しましたね。
| ※6. | 高塚新吾:『ウイニングイレブン』統括プロデューサー。『ウイイレ』シリーズの生みの親。 |
長曽我部実際のサッカーの中から重要な要素を抜き出してサッカーゲームとして再構築したものが、これまでの『ウイイレ』だとすれば、同じ90分から別の要素を抜き出して、新しい遊びとして再構築したものが今作だと思います。インターフェースが変わったことで、サッカーの違う部分を再現できるようになったわけです。
ちょっと言い方が固いですが、今作は、現実のサッカーを従来の『ウイイレ』とは別の方法で抽象化して、新しい楽しさを生み出すというコンセプトで制作していますので、ただ単に操作が新しいだけではなく、ゲームとしての新しさを感じながらプレイしてもらえればうれしいですね。
長曽我部今作は、従来の『ウイイレ』とどちらが面白いかと競合するものではありません。目指している方向が全く違うので、これまで『ウイイレ』をやってきた方々にも違う楽しさを感じながらプレイしていただければと思います。いきなり高度なコンビネーションプレイは無理でも、選手をシンプルに引っ張ってゴール前まで行ってシュートするところから始めてもらえれば、誰でも難しさを感じることなくプレイできると思いますので、まずは手にとっていただければと思います。
榎本今作のキーワードは、“もうひとつのフットボールリアリティ”です。従来の『ウイイレ』ではシステム的にできなかったことにも、大きなチャレンジをしています。実際のサッカーにはあって、これまでの『ウイイレ』にはなかったもの。今作でしかできないサッカーゲーム体験を、ぜひ楽しんでもらいたいと思います。
榎本 真司
えのもと しんじ
ウイニングイレブンプロダクション エグゼクティブプロデューサー
東京都出身、1958年生まれ。ウイニングイレブンプロダクション所属エグゼクティブプロデューサー。1991年KONAMIにサウンドスタッフとして入社以来、『ウイニングイレブン』シリーズの制作に従事。2001年から、エグゼクティブプロデューサーとしてシリーズを指揮する。2006年には、全世界でシリーズ累計840万本の販売を一年間で記録し、現在、全世界のフットボールカルチャーに貢献すべく、意欲的に新しいサッカーゲームの提案をしている。
長曽我部 明義
ちょうそかべ あきよし
ウイニングイレブンプロダクション プロデューサー
大阪府出身、1966年生まれ。ウイニングイレブンプロダクション所属プロデューサー。1998年3DデザイナーとしてKONAMIに入社し、現在のウイニングイレブンプロダクションに配属される。2003年、監督シミュレーションゲーム『ウイニングイレブンタクティクス』から、シリーズ担当プロデューサーに抜擢され、2008年、タクティクスシリーズ開発チームを率いて、『ウイニングイレブンプレーメーカー 2008』を完成させる。
| ジャンル | : | スポーツ |
| プレイ人数 | : | 1~2人 |
| 価格 | : | 7,140円(税込) |
| 発売日 | : | 2008年2月21日 |
| ニンテンドーWi-Fiコネクション対応 | ||
