5歳から95歳まで
岩田:
今回の『マリオギャラクシー』で、
宮本さんとずっといっしょに仕事をしてきて、
「やられた!」と感じることもあったと思います。
それはどんなことですか?
小泉:
「やられた」と思ったことはいっぱいあるんですけど、
あの「ちゃぶ台返し」を、今回はぼくがやってしまったんです。
ところが、宮本さんは
「どうしてひっくり返しちゃうの? 前のほうがよかったのに」って、
皿を並べ直してくれることが多かったんです。
岩田:
宮本さんが自分でひっくり返したときは、
いっしょにかたづけるという話はよく聞くんですけどね。
小泉:
わたしは今回、たくさんの皿を用意して、
不要になった皿はどんどん捨てようとしたんですけど、
「あのアイデアはよかったから、ここで使おうよ」って、
宮本さんは皿を1枚1枚、並べ直してくれたんです。
だから、ちゃぶ台のうえをキレイにしてもらったという印象があるんですね。
そういうこともあって、冒頭でコックさんのたとえ話を使ったんです(笑)。
岩田:
ゲームをつくっていて、ふつうダメになるときって、
新しい材料を持ってこさせようとする料理人が多いんです。
でも、宮本さんは、これとこれを組み合わせて食べたらうまいんじゃないの
っていうことをやって、とにかく素材をムダにしない人なんですね。
岩田:
苦労して、せっかく料理をつくった人も浮かばれますしね。
清水:
ところで岩田さんは、DSやWiiが出てから
「5歳から95歳まで楽しめる」ということを
何度もお話されてますよね。
だから、ぼくたちも「5歳から95歳まで楽しめる
『マリオギャラクシー』にしなければならない!」って
気合いを入れていました。
小泉:
それで誰でも遊べるようにするために、
開発初期のころは、難易度を低めに設定していたんです。
ところが、それを触った宮本さんは
「簡単すぎて緊張感がない」って言うわけです。
岩田:
「やさしくしたために緊張感がなくなるのはダメだ。
やさしいけど緊張感のあるゲームにしなきゃダメなんだ」
という話は、わたしもよく聞きます。
これは、先ほどの、スピンが一定の時間使えないようになる
という話にもつながることですよね。
小泉:
緊張感の話が出たので言いますと、
今回はとても大胆な提案をしたんです。ライフを3つにしたいと。
その結果、何度もマリオは倒れることになるけれど、
たくさん1UPキノコもとれるようにして、
リスタートポイントもつくりましょう、と。
『マリオ64』のとき、ライフは8つだったんです。
すると、倒れるようなことがほとんどなくなるんですね。
『マリオサンシャイン』も同じ8つだったんですけど、
ライフというパラメーターは緊張感に
ほとんどつながっていないと感じていたんです。
1UPが出てきても、そこにありがたさがあまりなかったわけですね。
そこで今回はライフを3つにして、倒れやすくなりますけど、
その代わり、1UPキノコをたくさんとれるようにしました。
岩田:
ライフが3か8かでゲームがすごく変わるということは、
ゲームを遊んでいる人には見えにくいことの代表ですよね。
清水:
そういった、ひとつひとつの要素に対して、
岩田さんの言う「5歳から95歳まで」という話と、
緊張感を持たせるにはどうしたらいいかというところで、
すごく葛藤がありましたね。
岩田:
このゲームをつくるうえで、
わたしの「5歳から95歳まで」というメッセージは、
スタッフのみなさんをすごく悩ませたんでしょうね。
もちろん、そういうお題目があったからこそ
それで生まれたゲームはたくさんあって、
その一方で、『マリオギャラクシー』をつくる上では、
かなり戸惑う話だったかもしれません。
でも、アシストプレイも生まれたわけですし、
その意味では、ユーザー層がすごく広がりそうな手応えを感じますね。
それでは最後に、
お客様へのオススメのことばをひと言ずつお願いします。
小泉:
もともと『マリオ』というゲームは、
クリアするというよりも、触るだけで楽しいソフトだと思うんです。
ですから、小さなお子さんでも、
マリオを動かすだけで楽しめるような場所をふんだんに用意しました。
そこでは、なにかをしなければいけないということを考えずに
遊ぶことができますので、自分に合った場所を見つけて、
自分なりの楽しみ方を見つけてほしいなと思いますね。
清水:
「みんなでテレビの前に集まってね」ということですね。
『マリオ』というゲームは必ずしもひとりでやるもんじゃないぞ、
ということです。
今回は、
6つのセーブデータがつくれるようになっています。
ですから、お父さんのMiiでつくったファイルを見てみたら、
「いつの間にかスターを10個も取ってるよ」
なんてことになると楽しいですよね。
それに、最後にプレイした時間は
ファイル選択画面で確認できるようになっていますので、
「お父さんたら、夜中に遊んでる!」
なんて会話も生まれると思います(笑)。
岩田:
22年前に初代『スーパーマリオ』が登場したときは、
テレビの周りに多くのギャラリーがいたんですね。
茶の間のテレビにファミコンがつながっていて、
ひとりのプレイヤーの周りを家族や友だちが囲んでいて、
プレイヤーといっしょに一喜一憂しながら、
「今度はぼくの番だ」というように、
コントローラを奪い合ったりしていたんですよね。
でも、時間とともに、ゲームの周りから人が減っていって、
最近はひとりで遊ぶことがふつうになってるように思います。
じつは、よくできたゲームには、
人が遊んでいるところを見るだけでもおもしろい
という共通部分があります。
せっかくWiiはリビングのテレビにつながっているので、
ギャラリーの人にもぜひ楽しんでいただいて、
中にはアシストプレイでちょっかいする人も出てきて、
気がついたらゲームをやらないはずの人が遊んでいた、
という光景が、今回の『マリオギャラクシー』で
見られるようになるとうれしいですね。
清水:
はい。ぜひそうなるようにと
がんばってつくりましたので、
ひとりでも多くの人に楽しんでもらえたらと思います。
岩田:
お疲れさまでした。
次回は、東京制作部の若手の開発スタッフに話を
訊くことにしましょう。